つれづれ音楽NOTE

ジャズピアノの練習やレッスン、音楽制作のこと等々、気の向くままに思っていることを綴るブログです。

ジャズピアノの習得[8] 即興演奏 - まずイメージを思い浮かべる

★話す(1)

今日は「話す」ことについて書いてみます。いわゆるアウトプットです。
ジャズでいうと、即興演奏がこれにあたりますね。

ジャズの即興演奏ではアドリブソロとバッキング(英語ではコンピング)がありますが、どちらも「話す」ことに変わりはなく、基本的に考え方は同じです。ただ、アドリブソロは自分が主体的に話し、バッキングの場合は人の話を聞いて相槌的に話す、聞き手に回るという感じです。言葉での会話と同じですね。

バッキングが上手いと話し手も気分がのってくるし、話がどんどん広がっていくという感じなので、非常に大事なんですが、それについてはまたいつか書くとして、ここでは自分が主体的に話すアドリブソロについて書いてみます。


ジャズのアドリブソロというのは、おおざっぱに言うと、「テーマについて自分の思っていることを話し、それでいかに聴いている人の興味をひきつけられるような会話を展開していくか」という感じです。

これは読む練習だけしていてもなかなか身に付きません。語彙力をつけるだけでなく、「自分の考えや思い」をまとめること、どのように伝えたら伝わりやすいかということも考える必要があります。

この語彙力というか、どういうフレーズを弾くかというのがミクロ的な感じで、全体の構成やアレンジ的なことなど、どのように伝えるかというのがマクロ的な感じと捉えたらいいでしょうか。

今日はミクロ的な、どういうフレーズを弾くかということについて書いてみますが、これってともすると理論的な話になりがちなので、そうではなく、私が思うもっと根本的なことを書いてみますね。


これからアドリブを習得しようという方は、ジャズのアドリブソロってすごく難しいことをすごいテクニックで演奏しなければいけないというイメージを持っているかもしれませんが、まずはそんな先入観を捨ててしまいましょう。

子供が最初からいきなり難しい言葉を流暢に話すわけではありませんし、また、早口で沢山しゃべればいいというものでもないのです。


アドリブソロはとにかく言葉を話すのと同じような感じだと思って下さいね。

普段、言葉を話す時って、まず頭の中に話す言葉ができて、それを実際に口に出して話していますよね。音楽もそれと同じです。自分の頭の中に鳴る音のイメージを実際に楽器などで音に出すのです。

何も浮かばないというのは、「自分がどういう音を出したいかというイメージ」がないということ。それは日頃からジャズに限らずポップスでも何でもよいのですが音楽を聴くということが足りていないか、ジャズだからとスケール等の理論がどうのこうのと難しく考えすぎているか、アドリブソロは早弾きしたり音で埋めないといけないという先入観があるかです。

でも、ジャズピアノをやりたいと思っている方なら、普段から少なからず音楽を好きで聴いているはずですので、全く何も浮かばないということはないと思うのです。例えばCのコードをジャーンと鳴らして、それに対して何か歌ってみてって言えば、少なくともドミソの中のどれかの音は浮かぶんじゃないでしょうか。

要するに、頭の中で何も音が鳴っていないのに、CのコードだからCのコードトーンを弾く、というのではなく、まず頭の中にその音が鳴るということが大事なんです。


アドリブソロは即興の作曲なので、まずは簡単なコード進行で、友達に話しかけるように心に浮かぶメロディーを歌ってみましょう。これは常に聴いてくれている相手を意識するということなんですが、相手が友達だと気軽に話せますよね。

難しく考えずに、コードが鳴ったらそれに対して鼻歌で自由にメロディーを歌えるように遊んでみて下さい。そして、その歌ったフレーズをピアノで弾いてみましょう。一人コール&レスポンスというか、コンサートでアーティストの方がよくやるみたいに、まず自分で歌ってみて、同じフレーズをピアノで繰り返すというやり方もいいですね。

最初のうちはそれが何の音なのかわからなくて探ったりするでしょうし、歌えてもすぐには弾けないかもしれません。なので、そのメロディーを譜面に書いて弾く練習をしても全然構わないです。そのメロディーが何音符なのか、譜面を書くことによって理解できるという側面もありますので、最初は書いてみることも大事かなと思っています。

いつも生徒さんには、ソロを弾く時に心の中で歌ってみるように言っていますが、ピアノの場合、これがなかなか難しいようです。ピアノって管楽器とは違って、押せば誰でも簡単に正しいピッチで音が出せてしまうので、指が歌と分離してしまって、指先だけで弾いてしまうことが多いんですよね。指だけで弾こうとするから、メロディックじゃないし、息継ぎがないことも多い。

でも友達に何か話す時って、1フレーズしゃべって相手の相槌や反応を待ったりしますよね。息をつく間もなくずっと喋り続ける人ってめったにいないと思います。アドリブソロもそれとまったく同じで、息継ぎだけでなく、そういう感じの「」が必要です。


ひとつの方法としては、アドリブソロを演奏する時、音(メロディー)だけでなはく、何でもいいから一緒に即興で詞をつけてみるのもいいかもしれません。
子供の頃、自分の思いを即興の歌詞をつけて適当に歌ってみた経験はありませんか?

例えば、ブルースのコードを弾きながら「♪お腹が、すいたよ〜」とか、「♪今日も残業〜、毎日忙しくて、嫌になる〜(T_T)」とか、何でもいいので、その時の気持ちを歌詞にして一緒に歌ってみるのです。ジャズって元々はそういうものであったはずです。

そうすれば弾くフレーズに「歌う」ということをより意識できるようになるでしょうし、息継ぎも自然に入れられるようになります。もちろん歌詞なしでもいいので、とにかく心の中に浮かぶメロディーを歌いながら、同時にそのフレーズをピアノで弾けるようにしましょう。歌は別に上手くなくても構いません(笑)。

第一線のプロのミュージシャンの演奏を聴くと、やはりフレーズが歌っていますよね。キース・ジャレットのように心の中で歌っているものが実際に声に出てしまっている方もいらっしゃいますし、声に出していない方も、心の中で歌っているのが弾いているフレーズから感じられます。(実際、見ていると口元が動いていたりします。)


あと、スタンダード曲等、歌ものの曲を演奏する場合は元々歌詞がありますので、たとえインスト(歌なし)での演奏であっても、どういう気持ちを歌った曲なのかということも理解して、その気持ちになって演奏してみるということが大事です。主人公の気持ちになったら、何か自然に音が湧いてくるのではないでしょうか。きっとタッチも変わってくると思います。恥ずかしがらずに、その曲の世界に入り込んでしまいましょう。

例えば「枯葉」を、歌詞の主人公の気持ちになって弾くのと、主人公について何もイメージせずにコードネームだけ見て弾くのとでは、たぶん演奏内容がまったく違った感じになるでしょう。スタンダードの歌ものの曲は恋愛や人生についてのエモい曲が多いので、これは人生経験のある大人だからこそできることだと思います。(弾きながら泣きたくなったり、感情が溢れてフレーズがアウトしても全然構わないです!)


しかし、それでもどうしても何も浮かばないという方の場合は、最初は理論的なやり方で作ることになるかと思いますが(例えば、コードトーンにアプローチノートをつけてみる等)、できれば本当は自然発生的に頭に浮かぶものを弾くというのが望ましいです。なぜなら、何もイメージがなく理論的なやり方だけで作ったフレーズは機械的で不自然になってしまうことが多く、感情など自分が伝えたいと思っていることが入っていないから。

音楽の表現って本来、楽しいとか嬉しいとか悲しいとか切ないなどのいろいろな感情や、太陽がふりそそぐとか雪が降ってるとかの情景、その他自分が伝えたいいろんなことを音で表現することだと思うのです。

そういう自分のイメージや思いのない、形だけの音楽ってやはり何も伝わらないんですよね。上手いけど、何が言いたいのかよくわからない音楽ってこの世にあふれています。

かと言って、理論を無視して感情だけで弾くということではありません。悲しい気持ちをただ「悲しい!」と叫んでいるだけでは聴いている人には伝わりにくい。聴いている人にも感情やイメージを共有・共感してもらえるようなその時の状況とかを、別の言葉でうまく表現するという感じでしょうか。

つまり、弾いている時は理論的な面と感情的な面の両方が必要で、まず自分の表現したいイメージや思いが最初にありきで、そこに理論的な方法も混ぜ合わせたりして(心と頭の両方を使って)実際の音にすることによって、表現のクオリティが高まるのではないかと考えます。

と言っても、これは最終的な理想の形なので、なかなか難しいですよね。

初心者の場合は、最初はコピーしたり、理論的なやり方からでも作って、何度も何度も繰り返すことによって自然に頭の中にその音が鳴るように身につけていくことが必要かもしれません。実際、私もオルタード系の音は最初慣れなくて、そのフレーズが自分の頭の中で自然に浮かんで鳴るようになるまで時間がかかりました。

ただ、大事なのは、こうやって理論的なやり方である程度弾けるようになったとしても、自分の表現したいイメージや思いは何なのかということは常に忘れないようにするということです。(これは過去の自分への反省でもあります(^^;。)


ところで先ほど、最初のうちは浮かんだメロディーを譜面に書いていっても構わないと書きましたが、1つ作ったらそれで終わりで、その曲を弾く時はいつまでたっても毎回同じソロを弾いているというのでは意味がありません。

常に、1つ作ったあとに、それよりもっといいメロディーにできないかとか、次はこれとは違うアプローチで作ってみようと考えるようにしましょう。

以前テレビで、タレントさん達が同じお題を与えられて俳句や短歌を作るという番組を見る機会があったのですが、皆さんそれぞれ、1つのお題に対して見方をいろいろ変えながら言葉を選んで、1つだけではなく複数の俳句や短歌を作っていました。

これってジャズのアドリブでも同じだなと思いました。
同じ曲やコード進行でも、こういった音の推敲や試行錯誤を常に続けていくことによって、センスを磨くことができ、少しづつ良いフレーズが作れるようになっていきます

そして、最初は1コーラス作ってみるだけでもけっこう時間がかかるかもしれませんが、数をこなしていくうちに、次第に何コーラスでも即興でどんどん弾けるようになっていくでしょう。

こういうのは直線の右肩上がりで上手くなっていくのではなく、階段状でしばらく同じようなレベルが続いたあとに、ある日突然できるようになったり、それまでわからなかったものがわかるようになったりしてステップアップしていくような感じですので、なかなか上達が感じられない期間があるとは思いますが、とにかく毎日少しづつでもやってみて下さい。

地味な努力が必要ですが、かっこよく弾いている自分の姿を思い浮かべながら、前向きに練習を続けてみましょう♪