つれづれ音楽NOTE

ジャズピアノの練習やレッスン、音楽制作のこと等々、気の向くままに思っていることを綴るブログです。

基礎練習 - メジャースケールの練習

メジャースケールというのは本当に基礎の基礎で、日本語で言うと「あいうえお」みたいなものなんですが、ジャズピアノを始めるにあたって全てのキーのメジャースケールが分かっていないと、コードなどの理論を理解したりアドリブをする上でどうにもならないので、まずそれを練習することが多いと思います。

私のレッスンでも、クラシックピアノの経験がかなりある方でも、まず最初はメジャースケールを全キーで弾いていただいています。

クラシックではスケール練習というと指のウォーミングアップ的な要素が強いと思いますが、ジャズなどポピュラーの場合はそれだけではなく、各キーの構成音を理解し、何番目の音が何なのかをパッと頭に思い浮かべられるよう身体にしみ込ませるためにやるという感じです。(あと、私のレッスンでは裏拍を意識することも同時に取り入れています。)

なので、スケール練習でドレミファソラシドが弾けたらそれでメジャースケールをマスターしたというわけではありません。全キーでメロディーが弾けて初めてマスターしたと言えるでしょう。

例えば、最初はメジャースケールの音だけでできている本当に簡単な曲、「ちょうちょ」でも「きらきら星」でも何でもいいので、それを全キーで弾いてみて下さい。

自分の頭の中に鳴るメロディーがどのキーでもきちんと音に出せましたか?
決して移調した音符を譜面に書かないで下さいね。書くと読譜になってしまうので意味がなくなってしまいます。キーだけ決めて何も見ないで弾くようにしましょう。きっと最初は弾きながらすごく頭を使うと思います。

おすすめは「ハッピーバースデー」、「きよしこの夜」、「イッツ・ア・スモール・ワールド」、滝廉太郎の「花」などでしょうか。メジャースケールの全ての音を使うし、メロディーが1度ではない音から始まり、適度に音が飛んでいて、さらに「きよしこの夜」「イッツ・ア・スモール・ワールド」「花」の場合は1オクターブ以上使う曲なので、良い練習になると思います。

できれば、Ⅰ・Ⅳ・Ⅴ(キーCなら、C・F・G)だけでいいので、左手でコードもつけて(できれば転回形も使って)弾いてみましょう。コードネームについては最初のうちは書いても構いません(コードネームだけで、音符は書かないで下さいね)。各キーのコードネームを頭に思い浮かべながらメロディーを弾いてみて下さい。

これもある意味スケール練習です。苦手なキーはこうやってまず簡単な曲で練習して慣れるといいですね。

メジャースケールなんてわかってるよ!!って思うかもしれませんが、こうやって弾いてみると、ピアノ経験の長い人でもこういう簡単なメロディーがなかなかすんなり弾けないものなんですよね。


ジャズの場合は曲中でキーが転調することも多く、その曲のキー自体がBとかG♭という曲は少なくても、曲中にそういったキーのダイアトニックコードが出てくることが少なくありません。(例えば、C♯m7-F♯7、A♭m7-D♭7などⅡ-Ⅴの形で出てくることが頻繁にあります。)なので、こういうコードが出てきた途端にアドリブが不自由になってしまわないよう、苦手なキーのスケールにも慣れておく必要があるのです。

五十音で、例えば「ば行」は出てくる頻度が少ないから別に覚えなくてもいい、ということにはならないですよね。頻度に関係なく、五十音全部覚えなかったらいつまでたってもきちんとした日本語が使えるようになりません。それと同じです。

あと、歌の伴奏の場合は同じ曲でも歌い手さんによってキーが変わります。特にジャズの場合はセッションやライブの本番でその場で譜面を渡されて弾くことが多いので、どんなキーでもさっと対応できるように全キーに慣れておきましょう。


前にも書きましたが、ジャズのアドリブというのは頭の中に浮かぶメロディー(自分が出したいと思っている音)を演奏するわけです。そのためにはまず、こういう何でもいいから知っている簡単な曲のメロディーを、どんなキーでも譜面なしで演奏できるようにするところからやってみましょう。

独学 or レッスン?

ジャズピアノを習得するにあたって、レッスンを受けるのはお金がかかるので、独学で何とか勉強したいと考えている方は多いのではないでしょうか。

私もたまに、ジャズピアノって独学で習得できますか?と聞かれることがあります。
答えは、「その人に依る」としか言えません。

プロになった方は、ほとんどが音楽大学、音楽専門学校、個人レッスン等でジャズの教育を受けた方ですが、たまに独学でプロになった方もいらっしゃいますので、不可能なことではないです。

例えば、こんな方なら独学で習得できるのではないでしょうか。

ピアノを弾く基礎はできている。
(ピアノ自体初めてという場合、独学だと変なクセがついたり、非効率的な指使いで弾いてしまったりして、後から直すのが大変ですので、ピアノの基礎だけでも先生について習った方が良いでしょう。)

元々ジャズが好きでよく聴いていて、どういう演奏が良い演奏なのか(あるいは自分がどういう演奏をしたいのか)イメージできている。

自分の演奏を客観的に聴けて、改善する部分を自分でわかっていて、そのための練習方法を自分で考えることができる。

自分で目標を立てて、毎日の練習を継続できる。
(練習するのが好き! 練習というより、ピアノで遊ぶという感じ。)

一緒に練習する仲間がいる。
(これは必須ではありませんが、ジャズ研などのサークルに所属していると、一人で練習するよりはモチベーションが上がるので上達が早いと思います。)


理論については本もいろいろ出ているようですので、自分で勉強することは可能です。ただ、それを実技の中でどう生かすのかというのは、理論の本を読んだだけではなかなかピンとこないかもしれません。

ちなみに私自身は独学ではないため、市販のジャズの教則本とか理論の本とか一切買ったことがなく、独学用のおすすめの教則本とか聞かれてもよくわかりません。

時々楽譜売り場に行って、レッスンに使えないかと思ってジャズピアノの教則本的なものを見てみたりしますが、私が見てもちょっとわかりにくく感じるので、これを初心者の方が説明を受けずに独学でやるのは大変なんじゃないかなって思ってしまいます。結局、教則本を買っても、そこに載っている譜面を弾くだけで終わってしまう可能性が高いのではないでしょうか。

ジャズってクラシックのように弾く音が決まっている訳ではないので正解がありませんし、自分の演奏のどこをどうしたらいいのかという客観的な判断は、初心者の方にはなかなか難しいと思います(特にリズムに関して)。なので、経済的に余裕があれば、やはり最初は独学よりもレッスンを受けることをおすすめします。


レッスンを受けるメリットは、

習得の近道や、やり方を教えてもらえる。
自分の演奏の改善点を指摘してもらえる。
わからないことを質問できる。
定期的に、この日までに課題をやり遂げようという目標ができ、練習するモチベーションになる。

といったところでしょうか。

逆に、いくらレッスンに通っても、受身的な方、ふだん音楽を聴かない方、ほとんど練習しない方は上達はなかなか難しいです(当たり前ですが^_^;)。
これが一番お金の無駄かもしれません。
(但し、レッスンを受ける目的が短期間で上達することではない場合は、この限りではありません。上達の速度は遅くても、レッスンに通うことが楽しいと思っていただけているのなら、生活に潤いをもたらしているという意味で通う価値はあります。)


あと、クラシックの場合はどうかわかりませんが、ジャズの場合は講師に依存しないということも大事です。

基礎を学ぶ段階では、与えられた課題をこなしていけばいいと思いますが、アドリブやアレンジをやるようになると、自分自身がどう弾きたいか、何を弾きたいかということを考えなければいけません。やり方は教えますが、実際に何を弾くかというのは講師が決めるのではなく、自分で決めるのです。前にも書きましたが、自分が弾きたいことは自分で研究するしかありません。これが受身的ではないということですね。

レッスンを受けてある程度まで弾けるようになって、自分がどう表現したいのかイメージが見えてきたら、ジャズはあとは自分で自分のスタイルを作っていく世界です。
そこは誰にも教えられない部分ですので、基本的には独学の精神(受身的ではなく能動的)でやっていって、その中でレッスンをうまく利用して客観的なアドバイスをもらうというのがベストだと考えます。


そして、音楽の勉強というのは終わりがなくて一生続くわけですが、もうあとは自分でやっていけると思ったらレッスンを受けるのをやめればいいと思います。

私も教える立場になった今でも、いろいろ聴いたり弾いたり作ったりする中で日々勉強していますし、自分がわかっていなかったり弾けないと説明したり教えたりできないので、教える事自体も復習というか良い勉強になっています。

ジャズピアノの習得[12] まとめ

前回までずっと、ジャズピアノを習得するための6つの側面について書いてきました。

人によっていろいろな考え方があるかと思いますが、これを読んで私のレッスンを受けようかなと思って下さっている方の参考になればと思います。ジャズの場合、クラシックのような決まった教則本はなく、先生によって教え方や考え方も異なりますので。

(もちろんレッスンでは、生徒さんそれぞれ目標や目的が異なりますので、これら全てをやるわけではありません。趣味で自分の好きな曲だけ楽しめればいいという方に、何にでも対応できるプロを目指すような練習は必要ないですし、どこまでやるかは各生徒さんと相談しながらやっていきます。)

しかし、ダラダラ書いていたら数ヶ月かかってしまいました。f(^_^;
まあ、一番最初に書いたように、このブログは決して系統だったことではなく、時間があいた時に思うことを思いつくままに書いていくブログなので、自分がこんなシリーズ的に書いただけでも、よく途中で嫌にならずに書いたなぁって思っています(笑)。

時間がかかってしまったので、最後に要点だけでもまとめておきますね。

☆習得のための6つの側面

・アドリブが中心のジャズの習得は外国語の習得と同じだとよく言われている。
・語学や様々な技術と同様、基礎を学んだ上で毎日それを応用、実践するような形で弾いていれば、誰でもある程度は自然に身につく。
・まずは基礎力を身につける(理解するだけでなく、自然にできるようになるまで必要量のトレーニングをする)期間が必要。
・言葉と同様に「聴く」「話す」「読む」「書く」「文法(理論)」、さらに「リズム」の6つがお互いに作用することによって、ジャズの基礎力を身につけることができる。
・それぞれの基礎を少し学んだらそれを自分の演奏の中で応用・実践してみる、そしてまた次の基礎を学ぶ、という繰り返しと積み重ねによってステップアップしていく。

☆理論

・理論を知ることにより、いろんなことが理解しやすくなるし、過去の人たちが今までやってきたことを自分で一から模索するよりも容易に身につけることができる。
・音楽は理論からできているのではなく、まず音楽が先にあった。理論よりも、伝えたい内容や感性が大事。
・理論は理屈を覚えるのではなく、できるだけ感覚的に身につけて使えるようにした方がいい。(理論的に間違っているからとかではなく、おかしいという感覚を身につける。)
・自分にとって新しいものは、感覚として身につけるまでとにかく繰り返す。
・理論にとらわれるのではなく、理論は知った上で、いかにそれを超えて自分の思いを表現していくか。
・自分で聴いてみて良いと感じるか悪いと感じるか、そのための感性、バランス感覚を身につけることが大切。

☆リズム

・ジャズをはじめポピュラー音楽の習得で最も大切なのは、「リズム感」や、いわゆる「グルーヴ」である。
・アドリブソロとなると難しいことを弾かないといけないと思いがちだが、そんなことはない。まずは簡単なフレーズでリズムにのることを目指そう。
・まずは基本(基準)として、「正確なリズム感」を身につける。
・練習する時は必ずメトロノーム、マイナスワン音源等の一定のテンポに合わせて、自分が今どういう音符(例えば8分音符、16分音符、三連符、等)で弾いているのかということを必ず意識して弾く。
・拍の中に自分が弾こうとしている音符がきちんとはまる練習。
・裏拍を感じる練習。
シンコペーションを入れる練習。アーティキュレーションも意識して弾く。
・きちっとした基準の拍を自分の中に持ちながら、それに対してわざとずらす(フレーズの一音一音を歌うように弾く)。
・ちょうどいい絶妙なズレが気持ちのよいゆらぎを生み、これがグルーヴとなる。

☆聴く

・ジャズは自分はこう弾くというのを表現する音楽なので、自分が弾きたいことは自分で研究するしかない。まず、受け身的な意識を変えることから始めよう。
・感性、センスを磨くために、良い音楽を聴くこと(インプット)が必要。
・なかなか上達しない方は、まず聴く量が全然足りていないなと思うことが多い。
・自分が好きなミュージシャンや目指すスタイルの人の音源をどんどん聴いていって、その人をマネするところから入るのがよい。
・美味しいフレーズ、コード進行、アレンジがあれば、その部分をコピーする(マネする)習慣をつけ、自分用のネタ帳にストックしていく。
・ここと思った場面でいつでも出せるようにするため、特に最初のうちは、何が入っているか毎日ネタ帳を見るようにする(できれば弾く)。
・コピーだけで終わってはいけなくて、それを「分析」→「応用」することによって自分のものになっていく。
・沢山のフレーズを覚えるというよりは、応用のパターンを増やしていくように練習する。
・市販のフレーズ集よりも耳コピ推奨。「自分が聴いて美味しいと思うこと」「自分が弾きたいと思うこと」が大事。
耳コピは慣れ。
・ジャズは音での会話なので、バッキングも言葉の会話と同じ。アドリブソロだけではなくバッキングも他の楽器に対してどういう風にやっているのか聴いてみよう。

☆読む

・テクニックや表現力を身につけるため、あるレベルに達するまでは2段譜の譜面(ジャズアレンジ譜やクラシック、etc.)で、決められたことを弾く練習もする。
・ジャズでもクラシックと同様、指のコントロールの練習は必須。
・自分の現在の技量より少しだけ上くらいのレベルで、自分が弾いてみたいと思う曲(弾いていて楽しいと思える曲)を弾く。
・できるだけ毎日ウォーミングアップとして弾くことに意味があり、それによって指のコントロールを身につけることが目的。
・ジャズアレンジ譜の場合は弾くだけではなく、さらにリードシートと比較しながらアレンジ分析も行い、自分のアレンジに生かしていく。
・ジャズではリードシートやマスターリズム譜を見て演奏することになる。プロレベルを目指すのであれば、初見力(コードの初見力、曲の構成の理解)が必要。
・初見力をつけるには、数をこなすしかない。
・何を表現したいかということへの意識が大切。

☆話す

・即興演奏で大事なのは、まず頭の中にその音が鳴るということ。
・友達に話しかけるように心に浮かぶメロディーを歌ってみる。同時にそのフレーズをピアノで弾けるようにする。
・常に話し相手を意識する。それによって「間」ができる。
・スタンダードなど元々歌詞のある曲は、どういう気持ちを歌った曲なのかということも理解して、その主人公の気持ちになって演奏してみる。恥ずかしがらずに、その曲の世界に入り込んでしまおう。
・まず自分の表現したいイメージや思いが最初にありきで、そこに理論的な方法も混ぜ合わせたりして(心と頭の両方を使って)実際の音にするのが理想。
・理論だけで作った形だけの音楽は聴いている人に何も伝わらない。理論的なやり方である程度弾けるようになったとしても、自分の表現したいイメージや思いは何なのかということは常に忘れないようにしよう。
・同じ曲でも音の推敲や試行錯誤を常に続けていくことによって、センスを磨くことができる。
・効果的に人に伝えるためにアドリブソロでも「構成」(入り方、盛り上げ方、終わり方)を頭に描いておく。
・「緩急」「間」を入れる。ピアノパートだけに限らずバンド全体の音として。
・何事でもよく言われているが、人を惹き付けるには「安心感」と「新鮮な驚き」の両方が必要。
・イメージトレーニング(頭の中でアドリブを具体的に展開する、ライヴのステージでかっこよく上手に演奏している自分をイメージしながら弾く、etc.)が上達の近道。

☆書く

・ジャズは自己表現の要素が強い音楽なので、最終的には作曲や編曲に繋がっていく。
・自分のアレンジやオリジナル曲のリードシートやマスターリズム譜程度の譜面は書けるようにしよう。
・普段からいろんな曲の耳コピなどして、譜面を書く事に慣れていこう。


以上、簡単にまとめてみました。詳しい内容は過去記事を見て下さいね。
シリーズ物なので、このカテゴリーはメニューにも入れておきました。
ジャズピアノは初めてでアドリブができるようになりたい!と思ってらっしゃる方に、少しでも参考になれば幸いです。


ということで、これからはこのブログは通常モードに戻りまして、思うことを気まぐれに更新していこうと思います。たぶん今よりもさらに更新頻度が減るかと思いますが^^;、たまにのぞいてやって下さい。

ジャズピアノの習得[11] 譜面を書く

★書く

今日は最後の「書く」ことについてです。
音楽で「書く」というと、譜面を書くことになりますね。

ポピュラー音楽、特にジャズをやっていると、いろいろと譜面を書く機会が多いです。理論の課題でヴォイシングを書いたり、コピーのために採譜したり、移調したり、分析したり・・・などなど。

クラシックピアノでは自分で譜面を書くという機会は少ないと思いますが、ジャズピアノの場合は譜面を書くことも大切です。なぜかというと、ジャズは自己表現の要素が強い音楽だからです。つまり、最終的には作曲や編曲に繋がっていくんですね。


前にもちらっと書きましたが、ジャズのスタンダード曲のジャムセッションなどでは、大体既にやり方が決まっています。いわゆる黒本等に載っている決まったコード進行のテーマに沿って順番にアドリブをしていく訳で、リズムパターンもこの曲ならこのリズム(スウィング、ボサノバ、バラード等)と決まっていることが多いです。
(「Take The A Train」や「All The Things You Are」のように、曲によってはイントロやエンディングもお決まりのものがあったりします。)

この中で自分を表現する部分というと、アドリブソロ部分くらいになってしまうのですが、自分の伝えたいことをもっと曲全体で表現したいという場合は、自分のオリジナル曲を作るか、既存曲を自分のイメージにそってアレンジするという形になるんですね。

こういうのは通常のジャムセッションでやるのはなかなか難しいので、自分のバンド等でライヴなどで演奏することになる訳なんですが、その時にバンドメンバーに配布するために自分のアレンジ譜やオリジナル曲の譜面を書く必要があります。

よく、ジャズに譜面は必要ないと思われていたりしますが、それはあくまでも即興演奏の部分の話で、完全なフリーインプロヴィゼーションでない限り、最低限メロディーとコードが書かれた譜面は必要です。

もちろん過去の巨匠と呼ばれる人たちの中には譜面が書けなかった人もいらっしゃいます。そういう方はたぶん、自分が作って演奏したものを聴いてもらって誰かに採譜してもらっていたのではないでしょうか。

しかし、今は昔と違って音大でジャズを教えている時代ですので、楽器がなんであれ(ボーカルの方も)、自分のアレンジやオリジナル曲のリードシートやマスターリズム譜程度の譜面は書けるべきだと思います。(ビッグバンドアレンジ等、ハーモニーを細かく指定するようなものは、もっときちんとした編曲の勉強が必要ですが。)

特にピアニストやギタリストは、コード楽器のため、譜面が書けて当たり前というところがありますので、オリジナル曲でなくても、バンドでやる曲の譜面(リードシート)作成を担当することも多いのではないでしょうか。

ですので、普段からいろんな曲のコピーなどして、譜面を書く事に慣れていきましょう。もちろん手書きでなくても、譜面作成ソフトを使ってもOKですよ。

リードシートやマスターリズム譜に採譜すると、コード進行だけでなく、曲全体の構成も見やすくなるので、作曲やアレンジの参考にもなりますね。

特にクラシックをやっていた方は、曲をやる時にまず市販の譜面を探そうとする傾向があるように感じますが、それだとなかなか聴く力も書く力もつかないので、まずは原曲を何度も何度も聴きまくって、できるだけ自分で採譜して(どうしてもわからない部分だけ市販の譜面で確認)、リードシート等を作成するようにしましょう。

ジャズピアノの習得[10] 即興演奏 - イメージトレーニング

★話す(3)

前々回、アドリブについて、まず自分がどういう音を出したいかというイメージを思い浮かべ、自分の頭の中に鳴る音のイメージを実際に楽器などで音に出す、ということを書きました。

これは言葉とまったく同じです。
私たちは普段、実際に声には出さなくても、頭の中でいろんなことを考えていますよね。喋っていない時でも四六時中、頭の中で文章を組み立てているわけです。あとはそれを声に出すか出さないかですよね。たぶん外国語も、同じようにすればかなり話せるようになるのではないでしょうか。


ジャズのアドリブも、別にピアノの前にすわらなくても、頭の中で音を鳴らすことによって訓練できます。マイナスワンを聴きながらでもいいですね。頭の中でアドリブを展開するのです。具体的な音を意識しながら、弾きたいフレーズがすんなりと鳴るようイメージトレーニングしてみて下さい。この時、実際に弾くつもりで運指も意識して下さいね。エアーピアノみたいな感じです。楽器が要らないので、いつでもどこでもできますよ。ただし、道を歩いている時は危険なので、電車に乗っている時や待ち合せで待っている時、家で食器洗いをしている時など、くれぐれも静止している時に行なって下さいね。

お仕事をしているとなかなか家でピアノを練習する時間が取れないと思いますが、これならちょっとした空き時間でも頭の中でアドリブ練習ができますので、ぜひ実践してみて下さい。

頭の中でアドリブが展開できるようになれば、あとはピアノで実際に音を出すだけです。もちろん、テクニックが不足している場合はピアノの技術的な練習をしなければいけませんが、頭の中に具体的なイメージがあれば、何を練習すればいいのか大体わかりますので、それを弾けるように練習していけばいいですね。

こういうイメージトレーニングってすごく大事です。
アドリブ練習の大部分はイメージトレーニングだと言っても過言ではありません。


そして上達のためには、弾く内容のイメージだけではなく、シチュエーションのイメージも大切です。

家で実際にピアノの練習をしている時も、常に、この演奏を今お客さんが聴いていると思って弾いてみましょう。イメージしやすいように、ぬいぐるみを椅子に座らせて、ぬいぐるみに聴いてもらうつもりで弾くというのも一つの手かも(笑)。
ライヴのステージでかっこよく上手に演奏している自分をイメージしながら弾くと、モチベーションも上がるし、上達も早くなりますよ☆

できれば、レッスンも毎回自分のライヴをやるイメージで来ていただければ、上達の速度が全然違いますよ! (^^)v

ジャズピアノの習得[9] 即興演奏 - 構成を考える

★話す(2)

今日はアドリブソロの全体の構成やアレンジ的なことなど、どのように伝えるかというマクロ的なお話です。

前回、アドリブソロは頭に浮かんだイメージを音にすると書きましたが、ただやみくもにその時に思いついたフレーズを弾いているだけでは、聴いている人に何が言いたいのか伝わりにくいです。

話をする時に起承転結というものがあるのと同様に、アドリブソロでも人に伝える以上は「構成」というものを考えなければいけません。

つまり、ソロの始めはどんな風に入るか(静かに話し始めるか、最初にバーンと変わったことをしてつかみはOK的に入るか、前の人のソロのフレーズを引き継いで入るか、等)、そこからどのように展開して盛り上げていくのか、最後はどのようにソロを終えるか、など、おおまかな全体イメージも頭に描いておく必要があります。

(もちろん、やる音楽によっては、これから先どうなっていくか自分でも全く分からないというスリル感が面白い場合もあるのですが、それでも最後どうやって終わるか考えることは必要です。そうしないと、尻切れトンボになったり、いつまでたってもダラダラ弾いていて終わらないということになってしまいますので・・・。)


あと、ソロにメリハリをつけるためには、「緩急」というものが必要です。
早弾きもゆっくりな部分があることによってそのテクニックの凄さが生きてきます。
ずっと8分音符とか、ずっと16分音符とかで弾いてしまいがちな方は、意識して他の長さの音符や休符の部分を混ぜてみましょう。

休符、すなわち「」は大事ですね。
最初のうちはどうしても、音で埋めないといけないと思ってしまって、弾かないことの方が勇気が要るかもしれませんが、コード1つ1つに何かフレーズを入れようとか思わずに、4小節とか8小節とか、広い範囲で音の流れを捉えることが大事です。
数小節何も弾かないとか全然問題ないので、試しにやってみて下さいね。

たった1音思いをこめて"コーーーン"と鳴らすだけでも、聴いている人を感動させることができるのが、本当にすごい演奏なのだと思います。


さて、こういった緩急とか間というのは、ソロのフレーズ的なことだけではなく、例えば、ピアノソロの時に必ずしも左手でコードバッキングを入れなければいけないという訳ではないし(しばらく右手だけで弾くとか左手だけで弾くとか、両手ユニゾンで弾くというのもアリです)、他の楽器のソロの時にピアノはずっとバッキングしなければいけない訳でもありません。ここは必要ないと自分が思えば弾かなくてもいいのです。

こういうのはアレンジ的な話にもなってきますが、ピアノパートだけを考えるのではなく、他の楽器と合わさったアンサンブル全体の音を聴くようにして楽曲全体を見渡し、自分が必要だと思う所に音を入れていくようにしましょう。

スタンダード曲のジャムセッションでは、大体のやり方が決まっているため少し難しいかもしれませんが、自分のバンドでライブをやる場合などは、ソロ回しの順番や曲全体の構成なども自由にできますので、効果的な表現の方法をいろいろ工夫してみてはいかがでしょうか。ジャズだからといって別に、まずテーマやってそのテーマのコーラスでアドリブを回していくという従来の形にこだわる必要はないと思います。

そしてさらに大きく考えて、ライブの時は同じような曲調の曲ばかりにならないよう色々取り混ぜて、1曲目をどうするか最後の曲をどうするかなど効果的な曲順(セトリ)を考えることも大事ですね。


これはジャズに限らず、何事でもよく言われていることですが、人を惹き付けるには「安心感」と「新鮮な驚き」の両方が必要だなとつくづく思います。
聴いていてずっと緊張感が続くのはしんどいし、かと言ってよくあるパターンの安心感だけでは物足りなく感じてしまいますよね。聴いていて心地良く、かつ刺激もほどよくある音楽なら、ずっと聴いていられる気がします。

自分が音楽をやっていく上でもそれに留意して、自分が聴く立場だったらどう思うか、自分が聴きたいと思うのはどういう音楽なのか考えるようにしていきたいと思っています。

ジャズピアノの習得[8] 即興演奏 - まずイメージを思い浮かべる

★話す(1)

今日は「話す」ことについて書いてみます。いわゆるアウトプットです。
ジャズでいうと、即興演奏がこれにあたりますね。

ジャズの即興演奏ではアドリブソロとバッキング(英語ではコンピング)がありますが、どちらも「話す」ことに変わりはなく、基本的に考え方は同じです。ただ、アドリブソロは自分が主体的に話し、バッキングの場合は人の話を聞いて相槌的に話す、聞き手に回るという感じです。言葉での会話と同じですね。

バッキングが上手いと話し手も気分がのってくるし、話がどんどん広がっていくという感じなので、非常に大事なんですが、それについてはまたいつか書くとして、ここでは自分が主体的に話すアドリブソロについて書いてみます。


ジャズのアドリブソロというのは、おおざっぱに言うと、「テーマについて自分の思っていることを話し、それでいかに聴いている人の興味をひきつけられるような会話を展開していくか」という感じです。

これは読む練習だけしていてもなかなか身に付きません。語彙力をつけるだけでなく、「自分の考えや思い」をまとめること、どのように伝えたら伝わりやすいかということも考える必要があります。

この語彙力というか、どういうフレーズを弾くかというのがミクロ的な感じで、全体の構成やアレンジ的なことなど、どのように伝えるかというのがマクロ的な感じと捉えたらいいでしょうか。

今日はミクロ的な、どういうフレーズを弾くかということについて書いてみますが、これってともすると理論的な話になりがちなので、そうではなく、私が思うもっと根本的なことを書いてみますね。


これからアドリブを習得しようという方は、ジャズのアドリブソロってすごく難しいことをすごいテクニックで演奏しなければいけないというイメージを持っているかもしれませんが、まずはそんな先入観を捨ててしまいましょう。

子供が最初からいきなり難しい言葉を流暢に話すわけではありませんし、また、早口で沢山しゃべればいいというものでもないのです。


アドリブソロはとにかく言葉を話すのと同じような感じだと思って下さいね。

普段、言葉を話す時って、まず頭の中に話す言葉ができて、それを実際に口に出して話していますよね。音楽もそれと同じです。自分の頭の中に鳴る音のイメージを実際に楽器などで音に出すのです。

何も浮かばないというのは、「自分がどういう音を出したいかというイメージ」がないということ。それは日頃からジャズに限らずポップスでも何でもよいのですが音楽を聴くということが足りていないか、ジャズだからとスケール等の理論がどうのこうのと難しく考えすぎているか、アドリブソロは早弾きしたり音で埋めないといけないという先入観があるかです。

でも、ジャズピアノをやりたいと思っている方なら、普段から少なからず音楽を好きで聴いているはずですので、全く何も浮かばないということはないと思うのです。例えばCのコードをジャーンと鳴らして、それに対して何か歌ってみてって言えば、少なくともドミソの中のどれかの音は浮かぶんじゃないでしょうか。

要するに、頭の中で何も音が鳴っていないのに、CのコードだからCのコードトーンを弾く、というのではなく、まず頭の中にその音が鳴るということが大事なんです。


アドリブソロは即興の作曲なので、まずは簡単なコード進行で、友達に話しかけるように心に浮かぶメロディーを歌ってみましょう。これは常に聴いてくれている相手を意識するということなんですが、相手が友達だと気軽に話せますよね。

難しく考えずに、コードが鳴ったらそれに対して鼻歌で自由にメロディーを歌えるように遊んでみて下さい。そして、その歌ったフレーズをピアノで弾いてみましょう。一人コール&レスポンスというか、コンサートでアーティストの方がよくやるみたいに、まず自分で歌ってみて、同じフレーズをピアノで繰り返すというやり方もいいですね。

最初のうちはそれが何の音なのかわからなくて探ったりするでしょうし、歌えてもすぐには弾けないかもしれません。なので、そのメロディーを譜面に書いて弾く練習をしても全然構わないです。そのメロディーが何音符なのか、譜面を書くことによって理解できるという側面もありますので、最初は書いてみることも大事かなと思っています。

いつも生徒さんには、ソロを弾く時に心の中で歌ってみるように言っていますが、ピアノの場合、これがなかなか難しいようです。ピアノって管楽器とは違って、押せば誰でも簡単に正しいピッチで音が出せてしまうので、指が歌と分離してしまって、指先だけで弾いてしまうことが多いんですよね。指だけで弾こうとするから、メロディックじゃないし、息継ぎがないことも多い。

でも友達に何か話す時って、1フレーズしゃべって相手の相槌や反応を待ったりしますよね。息をつく間もなくずっと喋り続ける人ってめったにいないと思います。アドリブソロもそれとまったく同じで、息継ぎだけでなく、そういう感じの「」が必要です。


ひとつの方法としては、アドリブソロを演奏する時、音(メロディー)だけでなはく、何でもいいから一緒に即興で詞をつけてみるのもいいかもしれません。
子供の頃、自分の思いを即興の歌詞をつけて適当に歌ってみた経験はありませんか?

例えば、ブルースのコードを弾きながら「♪お腹が、すいたよ〜」とか、「♪今日も残業〜、毎日忙しくて、嫌になる〜(T_T)」とか、何でもいいので、その時の気持ちを歌詞にして一緒に歌ってみるのです。ジャズって元々はそういうものであったはずです。

そうすれば弾くフレーズに「歌う」ということをより意識できるようになるでしょうし、息継ぎも自然に入れられるようになります。もちろん歌詞なしでもいいので、とにかく心の中に浮かぶメロディーを歌いながら、同時にそのフレーズをピアノで弾けるようにしましょう。歌は別に上手くなくても構いません(笑)。

第一線のプロのミュージシャンの演奏を聴くと、やはりフレーズが歌っていますよね。キース・ジャレットのように心の中で歌っているものが実際に声に出てしまっている方もいらっしゃいますし、声に出していない方も、心の中で歌っているのが弾いているフレーズから感じられます。(実際、見ていると口元が動いていたりします。)


あと、スタンダード曲等、歌ものの曲を演奏する場合は元々歌詞がありますので、たとえインスト(歌なし)での演奏であっても、どういう気持ちを歌った曲なのかということも理解して、その気持ちになって演奏してみるということが大事です。主人公の気持ちになったら、何か自然に音が湧いてくるのではないでしょうか。きっとタッチも変わってくると思います。恥ずかしがらずに、その曲の世界に入り込んでしまいましょう。

例えば「枯葉」を、歌詞の主人公の気持ちになって弾くのと、主人公について何もイメージせずにコードネームだけ見て弾くのとでは、たぶん演奏内容がまったく違った感じになるでしょう。スタンダードの歌ものの曲は恋愛や人生についてのエモい曲が多いので、これは人生経験のある大人だからこそできることだと思います。(弾きながら泣きたくなったり、感情が溢れてフレーズがアウトしても全然構わないです!)


しかし、それでもどうしても何も浮かばないという方の場合は、最初は理論的なやり方で作ることになるかと思いますが(例えば、コードトーンにアプローチノートをつけてみる等)、できれば本当は自然発生的に頭に浮かぶものを弾くというのが望ましいです。なぜなら、何もイメージがなく理論的なやり方だけで作ったフレーズは機械的で不自然になってしまうことが多く、感情など自分が伝えたいと思っていることが入っていないから。

音楽の表現って本来、楽しいとか嬉しいとか悲しいとか切ないなどのいろいろな感情や、太陽がふりそそぐとか雪が降ってるとかの情景、その他自分が伝えたいいろんなことを音で表現することだと思うのです。

そういう自分のイメージや思いのない、形だけの音楽ってやはり何も伝わらないんですよね。上手いけど、何が言いたいのかよくわからない音楽ってこの世にあふれています。

かと言って、理論を無視して感情だけで弾くということではありません。悲しい気持ちをただ「悲しい!」と叫んでいるだけでは聴いている人には伝わりにくい。聴いている人にも感情やイメージを共有・共感してもらえるようなその時の状況とかを、別の言葉でうまく表現するという感じでしょうか。

つまり、弾いている時は理論的な面と感情的な面の両方が必要で、まず自分の表現したいイメージや思いが最初にありきで、そこに理論的な方法も混ぜ合わせたりして(心と頭の両方を使って)実際の音にすることによって、表現のクオリティが高まるのではないかと考えます。

と言っても、これは最終的な理想の形なので、なかなか難しいですよね。

初心者の場合は、最初はコピーしたり、理論的なやり方からでも作って、何度も何度も繰り返すことによって自然に頭の中にその音が鳴るように身につけていくことが必要かもしれません。実際、私もオルタード系の音は最初慣れなくて、そのフレーズが自分の頭の中で自然に浮かんで鳴るようになるまで時間がかかりました。

ただ、大事なのは、こうやって理論的なやり方である程度弾けるようになったとしても、自分の表現したいイメージや思いは何なのかということは常に忘れないようにするということです。(これは過去の自分への反省でもあります(^^;。)


ところで先ほど、最初のうちは浮かんだメロディーを譜面に書いていっても構わないと書きましたが、1つ作ったらそれで終わりで、その曲を弾く時はいつまでたっても毎回同じソロを弾いているというのでは意味がありません。

常に、1つ作ったあとに、それよりもっといいメロディーにできないかとか、次はこれとは違うアプローチで作ってみようと考えるようにしましょう。

以前テレビで、タレントさん達が同じお題を与えられて俳句や短歌を作るという番組を見る機会があったのですが、皆さんそれぞれ、1つのお題に対して見方をいろいろ変えながら言葉を選んで、1つだけではなく複数の俳句や短歌を作っていました。

これってジャズのアドリブでも同じだなと思いました。
同じ曲やコード進行でも、こういった音の推敲や試行錯誤を常に続けていくことによって、センスを磨くことができ、少しづつ良いフレーズが作れるようになっていきます

そして、最初は1コーラス作ってみるだけでもけっこう時間がかかるかもしれませんが、数をこなしていくうちに、次第に何コーラスでも即興でどんどん弾けるようになっていくでしょう。

こういうのは直線の右肩上がりで上手くなっていくのではなく、階段状でしばらく同じようなレベルが続いたあとに、ある日突然できるようになったり、それまでわからなかったものがわかるようになったりしてステップアップしていくような感じですので、なかなか上達が感じられない期間があるとは思いますが、とにかく毎日少しづつでもやってみて下さい。

地味な努力が必要ですが、かっこよく弾いている自分の姿を思い浮かべながら、前向きに練習を続けてみましょう♪

ジャズピアノの習得[7] 初見力

★読む(2)

今回も譜面を読むことについてのお話ですが、今日は初見力についてです。

これは趣味で弾かれる方にはそれほど必要ではないかもしれませんが、もしプロレベルを目指している方であれば、ジャズではお仕事によっては初見力というのがかなり必要になってきます。

ジャズのライブって当日その場で曲を決めることが多々あり、知っている曲ならいいのですが、知らない曲だったりすると初見力がないとどうにもならないところがあります。当日リハをやったとしても、いきなり通しで1回か2回です。また、歌ものでボーカルの飛び入りセッションみたいな感じになると、同じ曲でも人によってキーが違いますし、その場で譜面を渡されて、たとえ知らない曲でもピアノがすぐにイントロを出さなければいけないなど、とにかく特にピアニストはなかなか大変です(^^;。

この時の初見力というのは、音符の譜読みというよりはコードの初見力、曲の構成の理解という感じです。譜面をいただいて、その場で
・どういうリズムの曲か(スウィング、ボサノバ、バラード、etc.)
・この曲のキーは何か
・指定なしのイントロを弾く場合は、テーマの最初のコードがそのキーの何度から始まっているか、弱起の曲かどうか(それによってイントロの最後を決める)
・アドリブのコード進行(特にⅡ-Ⅴ-Ⅰの場所を意識)
・ダル・セーニョやコーダの位置
・曲の終わり方
などを、パッと見て把握
しなければいけません。せーのでもう曲がぶっつけ本番で始まってしまいますので。

この力をつけるには、もうただただ訓練、数をこなすしかありません。
現場が一番鍛えられますが、家で練習する場合は、黒本でもリアルブックでも何でもいいので、パッと開けて出てきた曲を自分でイントロをつけて、途中で止まらないようにメトロノームに合わせて弾いてみるとか。
そしてコードを見てすぐに弾ける、アドリブができるという状態にするため、普段からいろんなキー(できれば全12キー)で練習する必要があります。


ただまあ、私自身はこういう初見でやるライブのやり方にはあまり賛同していなかったので(この曲で何を表現したいのかがよくわからないまま、ただ譜面を追って演奏するだけで終わってしまうので)、あまりこういうお仕事は積極的にやりませんでしたが、いきなりライブ本番ではなくリハーサルや趣味で弾く場合でも、曲をやるにあたっては上で書いたようなことは譜面を見て把握して練習する必要はあるでしょう。初見力とまでいかなくても譜面を見て曲の構造を見る力をつけるというか。そのためには、コード進行等、理論の知識も必要になりますね。その上での、何を表現したいかということへの意識が大切だと思います。

ジャズピアノの習得[6] テクニックと表現力

★読む(1)

今日は「読む」ことについて書いてみます。
これはインプットでもあり、実際に音出しする場合はアウトプットするためのトレーニングでもあります。

音楽で「読む」というと、譜面になりますね。

ジャズピアノの譜面は通常、いわゆる「リードシート」と呼ばれるメロディーとコードだけが書かれた1段譜か、さらにリズムのキメや指定のベースライン等が書かれた2段譜の「マスターリズム譜」と呼ばれる譜面を使用することが多く、クラシックのような全ての音符が書かれたピアノ用の2段譜を使用することはまずありません。指定以外の部分は演奏者に委ねられる部分が大きいのです。

なので好きなように弾けるというのがジャズの面白さではありますが、逆に言うと、自分が現在持っているものしか出せないので、ずっと手癖だけで弾いてしまったりしていると、テクニックや表現力がなかなか向上しないという問題があります。

例えば、コンボでジャズばかり弾いていると、左手はコードを弾くということが多いため、左手のテクニックがなかなか身につかないということがありますし、右手でも薬指、小指は弱くて思うように動きにくいので、ほとんど他の3本の指だけでソロを弾いてしまう方もいます。

ジャズは自由に弾いて構わないので、別にそれがダメという訳ではありませんが、表現の可能性がどうしても制限されてしまいますよね。
せっかく頭の中に音がイメージできても、それを実際の音にするためのテクニックや表現力が不足しているためにアウトプットできないのはもったいないです。
自分が話したいことを話せるテクニックは、最低限身につけなければいけません。
お笑い芸人さんがネタとしてはめちゃくちゃ面白いことを話していても、カミカミだったり棒読みのような話し方だったら全然面白くないですよね。


前に「聴く」のところでインプットの大切さについて書きましたが、かと言って耳コピしたフレーズの練習だけではなかなかテクニックや表現力を身につけるのは難しいと思います。

引き出しを増やすためのインプット(語彙力やアイデアを増やすこと)と、テクニックや表現力をつけるためのトレーニング(滑舌を良くすること、感情をこめて話すこと)というのはまた別だと考えています。

こういったテクニックや表現力は、ある程度クラシックをやっていた方なら身についているかもしれませんが、そうでない方には、アドリブ練習だけではなく、あるレベルに達するまでは2段譜の譜面(ジャズアレンジ譜やクラシック、etc.)で、決められたことを弾く練習もすることをおすすめします。

これは読譜力をつける、自然な(効率的な)指使いを覚える、というだけでなく、自分の中にはないものを弾くということと、音に表情を付けるための指のコントロール(強弱、抑揚、アーティキュレーション等)や指を動かすテクニックを身につけるために必要なことだと考えています。

同じ「おはようございます」でも言い方によって感情の伝わり方が全然違いますよね。それと同じように、音楽も音符を譜面通り弾いても、弾き方によって音の表情や伝わり方が全く変わります。

現在、第一線で活躍しているプロのジャズピアニストはほとんどがクラシック経験者です。そういう方達の演奏を聴くと、やはり音に深みがあるというか、ジャズだけやってきた方とはタッチや表現力が全然違うなと感じます。

ジャズとクラシックでは弾き方(指のタッチ)が異なる(なんなら逆だ)と思っている方を時々お見かけするのですが、私はそうは思いません。どちらも基本的に同じで、ジャンルの違いではなく単に曲ごとの曲調(楽器の編成を含む)の違いではないでしょうか。ジャズだから強く雑に弾いてもいいというわけではありません。音色を意識することはとても大事です。一流の方の演奏を聴いてみるとわかると思います。


クラシックのように2段譜の譜面通りに演奏することは「読む」ことで、アドリブで自分の思うことを弾くことは「話す」ことですが、音での表現ということでは違いはなく、どちらにしても指のコントロールの練習は必須だと考えています。

本来はアドリブで弾きながら同時に音のコントロールもできるべきで、それが最終目標ではありますが、最初のうちはアドリブで弾くフレーズを考えることやリズムに乗ることだけで精一杯だと思いますので、まずはそれができるようになる練習をし、併行して、あらかじめ決まった音符を弾くことで指のコントロールの練習をして身につけていくようにしましょう。


表現力のための練習なら、感情をこめられるようなメロディックで美しい曲を弾いてみるのがいいですね。クラシックならロマン派以降がおすすめですし、ポピュラーや日本人作曲家の曲でも良い曲や素晴らしいアレンジがたくさんあります。ジャズアレンジならバラード系の曲などがいいでしょう。

あるテクニックを集中的に練習したいという場合は、ハノン、ピシュナ、ツェルニー等のテクニック系の練習曲から選んだり、バッハなど両手を均等に使うような曲が効率的だと思います。ジャズアレンジなら左手がウォーキングベースしているような曲とか。

もちろんメロディックでかつテクニックが必要な曲もたくさんあります。
例えば、有名な「エリーゼのために」は初級者向きと言われていますが、小指と薬指という弱い指でのトリル、オクターブの跳躍、同音連打、アルペジオクロマティックスケール、16分・3連・32分への譜割の変化、そしてペダリング等の様々なテクニックに加えて、せつないメロディーと力強い部分の対比など表現力もかなり必要な曲です。

こういったことを参考にして、自分の現在の技量より少しだけ上くらいのレベルで、自分が弾いてみたいと思う曲(弾いていて楽しいと思える曲)を弾いてみましょう。

これは譜面通りに間違わずに弾けることが目的ではなく、間違わずに弾けて当たり前で、できるだけ毎日ウォーミングアップとして弾くことに意味があり、それによって指のコントロールを身につけるということが目的です。従って、1〜2ページくらいの曲で十分だと思いますし、時間がなければマスターしたいテクニックの数小節の部分だけでも構いません。

ハノンやピシュナは、例えば4、5の指が弱すぎるため強化して均一に動かせるようにしたいというような方の場合に有効です。特に小指って、右手はメロディーとなるコードのトップノートだったり、左手はベース音だったり、他の音より強調することが多くて、結構重要な役目を担っている指なんですよね。

で、ハノンはそのままただ弾いているだけでは単調で面白くありませんが、メジャースケールでできているので、ダイアトニックコードを裏拍につけたり、フレーズをアレンジしたり、ドラム&ベースをつけて様々なリズム練習と組み合わせたり、マイナースケール等他のスケールで弾いてみたり、スケールワイズ進行等に小節の順番を変えたり、左手の度数をずらしたり(右手は1度、左手は3度の音から始める、等)、これらを移調したり、1小節目のパターンを半音ずつ上げて(下降では下げて)いったり(つまり1小節ずつ移調、2小節目のパターンならドリアン、3小節目ならフリジアン…といった感じ)、やり方を工夫すればジャズを演奏するための基礎練習にもなります。(私のレッスンの中でもやっていますので、興味のある方はどうぞレッスンにお越し下さい。)


あと、ジャズアレンジ譜の場合は弾くだけではなく、さらにリードシートと比較しながら、アレンジ分析も行うようにしましょう。前にも書きましたが、ジャズでは応用することが大事なのです。

テーマも決して、単純に右手メロディー、左手コードだけではないはずです。
オブリガートクリシェの入れ方、右手と左手のコードの分担、リハモニの仕方など、こういうのは実際のアレンジを弾いていく中で、こういうコード(進行)の時にこういう音使いをしているんだなと理解する方が身につきます。(これをまた自分のネタ帳に書いておくといいですね。)

そしてそれを、ソロピアノで自分で他の曲をアレンジしたり、トリオでもテーマを弾く際のアレンジに生かしていきましょう。

ジャズピアノの習得[5] 耳コピについて

★聴く(2)

前回、「聴くこと」の重要性と、耳コピについてちらっと書きました。

しかし、耳コピなんてやったことがないから自分には無理だとおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。音を取るなんて、何だかハードルが高いと感じているのではないでしょうか。

でも耳コピって、ほとんどの方がやったことあるはずなんですよね。たぶん「マネして歌う」のはほとんどの方ができるのではないでしょうか?

たとえばカラオケで歌う曲は、原曲を聴いて覚えてますよね?
いちいち譜面を買ってきて覚える方はほとんどいないと思います。

あるいは、コンサート等でコール&レスポンスをすることがあると思いますが、アーティストの方が歌ったフレーズをそのまま繰り返して歌うとか、皆さん普通にできてますよね。

楽器の曲でもメロディーは歌えますよね。有名な曲のイントロとかも歌えると思います。それが「歌」「メロディー」から「ピアノ」に変わっただけです。音は取れるはずなんです。

それなのに、ピアノの耳コピだとなぜ難しいと思うのか、原因を考えてみました。

(1)原曲はいろんな楽器の音が混ざっていて、歌ならわかるが、ピアノの音だけ取り出すのが難しい。

聴きたい楽器の音だけに集中するというのは、聴こうという気持ちと慣れの問題です。
音楽をやっていない人でも、あるバンドのファンの人だったりすると、自分の好きなメンバーの楽器の音をやはり集中して聴いたりするそうです。なので、とにかくピアノの音に気持ちを集中して聴いてみましょう。

(2)ピアノは単音ではなく和音が鳴ってるから聞き取りが難しい。

ピアノは単音楽器ではないので、確かに和音が鳴っていると聞き取りにくいかもしれません。とりあえずは、アドリブフレーズなら単音のフレーズからコピーしてみるとか、ピアノだけに限らずサックスのような単音楽器のフレーズをコピーしてみてはいかがでしょうか。管楽器のフレーズにはきちんと息継ぎが入っているので、ピアニストにはとても勉強になります。

ジャズのスタンダード曲やレッスンの課題曲をコピーする場合は、コード譜を既に手元に持っていると思いますので、トップノート(一番上の音)を聴き取れば和音はコードネームから大体わかるのではないかと思います。コードトーンやテンションの知識がこういう時に役に立ちますね。

(3)速いフレーズが歌よりも複雑。

今はピッチを変えずにテンポだけ遅くするソフトやアプリがあって、本当に便利になりました。その部分だけ範囲指定して何度も繰り返すことも簡単にできるようになっています。速いフレーズもそういうアプリ等を使えば音が取れるのではないでしょうか。

最近まで知らなかったのですが、今は動画サイトでもピッチを変えずに再生速度を変えることができるんですね!
昔レコードやCDからコピー用にカセットテープに落として何度も何度も巻き戻して音を取ったことを思うと、今はもう本当にコピーがやりやすくなっていますよね。(カセットテープって何ですかって聞かれたらどうしよう・・・^^;)

(4)音を聴いて歌えても、それがピアノで何の音になるのかわからない。

絶対音感でなければ、聴いただけで何の音かなんてわからないのは当たり前です。実際に音を出して確認してみましょう。
それでもコード譜が既にあれば、キーから大体予測はつきますよね。ここでも理論の知識が役に立ちます。


耳コピって最初はすごく時間がかかると思いますが、数拍から1〜2小節のフレーズだけとかなら何とか心折れずにやれるのではないでしょうか。少しずつ慣れていけば、だんだんコピーも苦ではなくなってきますので、ぜひトライしてみて下さいね。ジャズピアノを練習してテンションの音に耳が慣れてくると、テンションが入ったコードの聞き取りもできるようになりますよ。


あと、音源を集中して聴いていると、耳が鍛えられて、だんだんと他の楽器の音も聴けるようになってきます。

セッション等でピアノは他の楽器のソロの時にバッキングもする訳ですが、ジャズは音での会話なので、この時に他の楽器の音を聴いてうまく反応できるようにしたいですね。

人と会話している時に聞き上手になるには?
話し手の気持ちをうまく盛り上げるには?
バッキングも言葉の会話と同じです。
「こいつ俺の話聴いてないな(-_-;」って思われないよう、話し手が気持ちよく話せるようにしてあげましょう。

参考音源を聴く時は、アドリブソロだけではなくバッキングも他の楽器に対してどういう風にやっているのか聴いてみて下さいね。